肩書き詐称か、環境不足か──
1996年、ポケットモンスター赤・緑が登場した。
今でこそ数百匹のポケモンが存在するこの世界も、当時は151匹。全てのバランスはこの狭い生態系の中で構築されていた。
そんな限られた資源の中でも「タイプ専門家」として登場したのが【四天王】である。
氷・格闘・ゴースト・ドラゴン──それぞれに特化したエキスパートたちが、殿堂入り前に立ちはだかった。
だが。
本当に彼らは“専門家”と呼べる存在だったのか?
その肩書き通りのポケモンを揃えられていたのか?
我々は、長年この疑問を抱えてきた。
今回は、その四天王たちを考察する。今こそこの永遠の謎に終止符を打とう。
カンナ──氷タイプの女帝、その実態
【肩書き】:こおりタイプのつかい手
【登場順】:一番手
【肩書き適合率】:80%
【タイプ分布】:5体中4体が氷複合
● カンナの手持ち
- ジュゴン(みず・こおり)
- パルシェン(みず・こおり)
- ヤドラン(みず・エスパー)
- ルージュラ(こおり・エスパー)
- ラプラス(みず・こおり)
● 実質「みず・こおり」の専門家
カンナは四天王の中でも最も「肩書き適合度」が高い。
氷タイプはまだ少なかったが、彼女はその全てをフル動員してくる。特にジュゴン・パルシェン・ラプラスは氷複合の代表格。ルージュラも氷のスペシャリストと言っていい。
だが、問題は3枠目のヤドランである。
こおりタイプ要素ゼロ。完全に【保険枠】。エスパー要員として入っており、氷使いとしてはやや迷走している。
● なぜヤドランがいるのか?
- 「ルージュラと役割被ってるけど、当時の氷が少なすぎた」
- 「開発スタッフがヤドラン推しだった説」
- 「カンナは水辺育ち。氷より“寒冷水域”マニアだった」
実際、ジュゴンもパルシェンもラプラスも冷水生物という点では共通している。
もはや「北極圏ポケモン愛好家」と言った方が近いのかもしれない。
シバ──格闘エキスパート(を名乗る男)
【肩書き】:かくとうタイプのつかい手
【登場順】:二番手
【肩書き適合率】:60%
【タイプ分布】:5体中3体が格闘、2体はまさかの異物混入
● シバの手持ち
- イワーク(いわ・じめん)
- エビワラー(かくとう)
- サワムラー(かくとう)
- イワーク(いわ・じめん)
- カイリキー(かくとう)
● イワーク2体で水増しした男
四天王屈指の謎構成王。
なぜか開幕からイワークでスタートするという苦しい構成を披露してくる。
しかもこのイワーク、格闘要素ゼロどころか、格闘の天敵であるいわタイプ入り(いわ・じめんなのでダメージ倍率2倍)である。
これにより「格闘使い」の肩書きに最も疑問符が付くのがこのシバである。
● イワーク投入の理由
- 「イワークに無理やり空手道を教えようとしたが無理だった」
- 「実は岩石格闘道場の道場主」
- 「ポケモンリーグの石材を大量に搬入した責任者だった(建築業者説)」
あえて言えば「筋肉と硬さ」なら共通点がある。だが、実質的には格闘枠はサワムラー・エビワラー・カイリキーの3体のみ。イワークは空気を読まずにゴロゴロしているだけだ。
● シバは環境の犠牲者か?
初代はそもそも格闘タイプが冷遇されていた時代。サイコキネシスの支配下で、格闘ポケモンはエスパーに蹂躙される悲しき宿命を背負っていた。
シバの構成は、当時の「格闘不足」と「対エスパー用岩ポケモン投入」の苦し紛れの結果だった可能性が高い。だがプレイヤーからすれば
「いや、それ格闘ちゃうやん!!」
と突っ込まざるを得ない。
キクコ──ゴースト使いと呼ばれた毒の魔女
【肩書き】:ゴーストタイプのつかい手
【登場順】:三番手
【肩書き適合率】:40%
【タイプ分布】:5体中 ゴースト3(実質1種)、毒5
● キクコの手持ち
- ゲンガー(ゴースト・毒)
- ゴルバット(毒・ひこう)
- ゴースト(ゴースト・毒)
- アーボック(毒)
- ゲンガー(ゴースト・毒)
● ゴースト使いと言い張る毒マスター
「キクコ=ゴースト使い」という公式設定は、当時のプレイヤーたちに衝撃と疑問を同時に与えた。
実際のところ、初代にはゴーストタイプのポケモンがゴース・ゴースト・ゲンガーの3種族しか存在しなかった。しかも全員が毒複合。
そのせいで彼女の手持ちは実質「毒タイプ5体」で構成されるという謎の偏りを見せる。
●初代のゴースト事情
結果、ゴースト使いと言いながら、戦闘スタイルは毒技+補助技がメイン。ゴースト属性はただの看板に近かったのが実情だった。
● キクコの本当の専門は?
● ここで一旦、救済措置を考えてみる
これらの条件下で、キクコが「毒まみれのゴースト使い」に仕立て上げられたのは、むしろ開発陣の苦心の跡とも言える。
開発サイドの心の声が聞こえてきそうだ
「毒タイプも少ないし、ゴーストは実質ゲンガー系統しかいないし……ええい、全部混ぜたれ!」
ワタル──ドラゴン使い最大の怪
【肩書き】:ドラゴンタイプのつかい手
【登場順】:四天王のラスボス
【肩書き適合率】:50%(優しく見積もってこれ)
● ワタルの手持ち
- ギャラドス(水・ひこう)
- ハクリュー(ドラゴン)
- ハクリュー(ドラゴン)
- プテラ(いわ・ひこう)
- カイリュー(ドラゴン・ひこう)
● まず驚くのがギャラドス
ドラゴン使いを名乗りながら、開幕の一匹目がギャラドス。
…たしかに龍っぽい。龍の見た目はしている。しかしタイプ相性としては、水・ひこう。
ただ、ワタル本人の「イメージドラゴン感」は満たしているので、彼の審美眼の問題と見るべきか。
● ハクリューの連投
続く2枠目・3枠目にハクリュー×2を配置してくる荒技。
たしかにドラゴンではあるが、2段階目進化のポケモンを投入するとは、ワタルの悲しい現実が見える
そう、初代のドラゴンタイプはわずか3種しか存在しない。
進化系統であり、実質「ドラゴン家族1系列」のみ。
つまり「ドラゴン統一パーティ」を組もうとすると、こうして 親戚総動員 するしかなかったのだ。
● プテラという謎の起用
次に出てくるのがプテラ。岩・飛行タイプ。
どこがドラゴンなのか──と問われると非常に困るが、おそらくワタル的には
という「雰囲気ドラゴン枠」として起用されているのだろう。
正直カブトプスでも出してきたら破綻していた。まだプテラで踏みとどまっているのは評価してよい(?)。
● 最後はカイリュー
満を持してラスボスとしてカイリュー。
ついに純正ドラゴンっぽいのが登場。
正直、初代ではカイリューだけがワタルのドラゴン使いのアイデンティティを支えていたと言ってよい。
● ワタルはなぜこうなったのか?
初代当時、ドラゴンタイプは「特別感を出すために種類を絞った感」が強い。
ワタルも内心ではこう思っていたはずだ
「……せめてもう2~3種類ドラゴンくれれば完璧だったのに。」
● ワタルは「イメージドラゴン使い」
タイプ相性や属性分類ではなく「ドラゴンっぽい奴はみんなドラゴン」という哲学を貫く男。
初代という未整備の世界観では、むしろ一周回って潔いとも言える。
カンナと並び、愛は本物だったと評価してよい。
【結論】初代四天王は「タイプ愛好家たち」である
登場順 | 名前 | 名乗り | 適合率 | コメント |
---|---|---|---|---|
1 | カンナ | 氷 | 80% | 氷愛は本物。ただし水多め |
2 | シバ | 格闘 | 40% | 実態は岩・地面の親方 |
3 | キクコ | ゴースト | 60% | 実質毒パ。本人も毒舌 |
4 | ワタル | ドラゴン | 50% | イメージドラゴン職人 |
最終妄想
…そしてあなたはここまで読んだ。その執念に敬意を表したい。
でもこんな考察をしているとキクコからこう言われそうである。
「あんたはゲンガーにしてくれる友達もいなさそうだね」