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【初代ポケモン】イワークはなぜここまで攻撃力が低いのか

ゲーム考察

初代ポケモンをプレイしたトレーナーなら、誰もが一度はこう思ったはずだ。「イワーク、なんでそんなに攻撃力低いの?」

あの圧倒的な巨体。岩と地面を司るタイプ。立ちはだかる姿はまさに「動く岩山」であり、その威圧感たるや、初めて対峙した時の衝撃は忘れられない。

だが、冷静に考えてほしい。この巨大な蛇型ポケモン、図鑑では「地中を時速80キロで掘り進む」とまで記述されているにも関わらず、その攻撃性能は見るも無残な有様だ。一体、何がどうなったら、あれほどまでにデカい図体が、その威容に見合わない貧弱な攻撃しか繰り出せないというのか?

この不可解な事象について、我々は今、真剣に考察せざるを得ない。

イワーク、その圧倒的なる「耐久」と絶望的な「攻撃」

まずは、イワークの基本的な能力値、通称「種族値」を見てみよう。

能力値イワークニドキングゴローニャ
HP358180
攻撃4592110
防御16077130
素早さ708545
特殊307555

見てほしい。この圧倒的な防御力「160」。これは初代ポケモンの中でもトップクラスであり、物理攻撃に対してはまさに鉄壁と呼ぶにふさわしい。当時の物理環境において、イワークを突破するのは至難の業だった。

しかし、その一方で目を背けたくなるのが、攻撃力「45」だ。隣に並べたニドキングやゴローニャといった、同じ「じめんタイプ」を持つポケモンと比べても、その低さは際立っている。ゴローニャの半分以下、ニドキングの半分程度しかない。HPも低いので、特殊技が飛んでくるとひとたまりもないというピーキーさも加わり、なんとも言えない切なさがこみ上げてくる。

説明では「体を締め付けて相手を粉砕する」「どんな硬いものでも砕く」などと、いかにも攻撃力が高そうな記述が並ぶが、実際のゲーム内では、まるで話にならない火力で相手に「ちまちま」とダメージを与えていたのだ。これが、我々の抱える「イワーク攻撃力問題」の根源である。

図鑑詐欺か?それとも壮大な謎解きか?

「だが、ここで疑問が生まれる」。なぜだ? なぜ、これほどまでに巨大で、地中を掘り進み、体を締め付けて「粉砕する」とまで言われるポケモンが、その攻撃力を抑え込まれているのか? ゲーム開発者が意図的にこんな貧弱な攻撃力に設定したとでも言うのか?

冷静に考えてみてほしい。もしイワークの攻撃力が、防御力と同じくらい高かったとしたら、どうなっていたか? おそらく、序盤のジムリーダーであるタケシのイワークは、多くのプレイヤーにトラウマを植え付け、ゲーム序盤での挫折者を大量生産していたことだろう。「たいあたり」で即死、「がんせきおとし」で全滅、そんな悪夢が現実になっていたに違いない。

つまり、あの低攻撃力は、プレイヤーへの「慈悲」だったのか? だとすれば、あの図鑑説明は、プレイヤーへの壮大な「釣り」なのか? 我々の思考は、すでに狂気の淵をさまよい始めている。

イワークの「弱攻撃」を巡る深淵

イワークの攻撃力の低さには、一体どのような理由が隠されているのか。複数の可能性から考察してみよう。

① 調整用だった説

この説は、最も現実的で、そして多くのプレイヤーが薄々感じていたことだろう。つまり、ゲーム序盤のジムリーダーであるタケシの切り札として、イワークが設定された。その際、プレイヤーが序盤で詰むことがないよう、あえて攻撃力を低く抑えられたのではないか、というものだ。

もしタケシのイワークが、あの防御力に加えて高い攻撃力を持っていたら、ヒトカゲを選んだプレイヤーは間違いなく地獄を見たはずだ。この「慈悲調整説」は、開発者の深い愛情と、プレイヤーの挫折を防ぐための苦肉の策だったと解釈できる。だとしたら、我々はイワークの攻撃力の低さに感謝すらするべきなのかもしれない。

② 開発都合説

初代ポケモンの開発は、今では考えられないほど限られたリソースと時間の中で行われていた。もしかしたら、イワークの巨大なグラフィックや、その見た目から連想される「硬さ」だけが先行し、後から能力値を設定する段階で、バランス調整の辻褄合わせのために攻撃力が犠牲になった、という可能性も捨てきれない。

「このデザイン、絶対強いよな!」「でもタケシのジムで使うから、攻撃力は控えめにしないと…」「うーん、じゃあ防御に全振りで!」みたいな、当時の開発現場の悲鳴が聞こえてきそうだ。

③ バランス調整ミス説

まさかとは思うが、開発側の単純な「ミス」という可能性もゼロではない。初期の能力値設定段階で、何らかの意図で防御力が高く設定され、その結果、他の能力値に割くポイントが足りなくなり、攻撃力が「余り物」として低い値に設定されてしまった、というパターンだ。

あるいは、テストプレイで「あれ? イワーク、なんか弱くない?」と気づいた時には、すでに手遅れで、製品版の発売スケジュールが迫っていた…という、ありがちな悲劇があったのかもしれない。もしそうだとすれば、イワークは壮大な「誤算」の犠牲者だったことになる。

④ 後付け進化・設定伏線説

イワークは金銀世代でハガネールへと進化する。攻撃種族値は「85」と大幅に向上。これは、初代のイワークの「攻撃力の低さ」が、後の進化による能力向上を際立たせるための「伏線」だった、と考えることもできる。

つまり、初代のイワークは「まだ覚醒していない」状態であり、あの攻撃力の低さは「ポテンシャルの秘匿」だったのだ! と、無理やり解釈すれば、壮大な物語の一端を担う存在となる。…いや、さすがに深読みしすぎか。

⑤ メタ的ゲームデザイン説

初代ポケモンは、ポケモンバトルにおける「役割」の重要性を、プレイヤーに無言で教えていたのかもしれない。イワークは、その極端な能力値(高防御・低攻撃)によって、「物理受け」という役割をプレイヤーに強く意識させたかったのではないか?

つまり、「攻撃は他のポケモンに任せて、イワークは相手の攻撃を受け止めることに徹しろ!」という、開発側からのメッセージだったのだ! そう考えると、イワークの攻撃力の低さは、もはや「欠点」ではなく、ポケモンバトルの奥深さを教えるための「英才教育」だったと言える。

真の「デカいズバット」問題

さて、イワークの攻撃力の低さがいかに異常か、具体的な比較でさらに深掘りしてみよう。

例えば、攻撃力「45」という数値は、どの程度のものか? なんと、ポッポの攻撃力「45」と同じだ。さらに、ズバットの攻撃力「45」とも同値である。

イワーク、その巨体で、ポッポやズバットと同じ攻撃力。

これこそが、「イワークの攻撃力、なぜここまで低いのか問題」の核心を突く衝撃の事実だ。体長8.8m、体重210kgのイワークが、体長0.8m、体重7.5kgのズバットと同じ攻撃力なのだ。もはやこれは、「デカいズバット」と言っても過言ではない。

「ロックオン!(かみつく)」「シュバババ…(ズバットに等しいダメージ)」 こんな光景が目に浮かぶ。

当時のプレイヤー体験として、タケシのイワークに対して、みずタイプやくさタイプで弱点を突けば、それなりにダメージは入った。しかし、弱点を突けないポケモンで挑んだ場合、イワークの体力はなかなか削れず、まさに「硬くて、でも全然痛くない」という、奇妙な絶望感を味わったものだ。物理技が効かない上に、相手の攻撃も痛くないから、いつか倒せるだろう…という希望的観測を抱かせつつ、無限に続く作業感で精神的に追い詰める。これこそが、イワークの真の恐ろしさだったのかもしれない。

【結論】イワークは「温厚な巨人」であり「見せかけの暴力」だった

イワークの攻撃力、なぜここまで低いのか? この深淵なる問いに対する結論を、私はこう断言したい。

イワークは、初代ポケモンにおいて、その圧倒的な見た目とは裏腹に、「温厚な巨人」としてデザインされたのではないか。

あの巨体と強靭な防御力は、あたかも「このポケモンは強そうだぞ!」というプレイヤーへの視覚的アピールであり、同時に、序盤でのバランスを崩さないための「見せかけの暴力」に過ぎなかったのだ。

その低い攻撃力は、開発者のプレイヤーへの優しさであり、ひいては「ポケモンは見た目だけじゃない、能力値もちゃんと見ろ」という、奥深いメッセージが込められていたのかもしれない。

つまり、イワークは「デカいズバット」でもなければ、「図鑑詐欺」でもない。 あの巨体で控えめな攻撃力を持つイワークこそが、初代ポケモンのゲームバランスと、プレイヤーの学習体験を守る、真の「縁の下の力持ち」だったのだ!

今日もどこかで、巨大なイワークが、そっとプレイヤーの旅路を見守っている。その非力な攻撃力で。

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