ゲーム考察ポケットモンスター

【ポケモン金銀】コガネシティ地下通路の美容師兄弟、なぜ兄は200円高いのか?

ゲーム考察

はじめに

ジョウト地方最大のメガロポリス、コガネシティ。その華やかな百貨店やラジオ塔の影に、ひっそりと存在する「ちかつうろ」。薄暗く、どこか怪しげなその場所で、ポケモントレーナーたちの間で密かな人気を博しているサービスがある。それが、「美容師兄弟」によるポケモンの毛づくろいだ。

多くのプレイヤーが、ポケモンのなつき度を上げるために、彼らの世話になったことだろう。しかし、そのサービスを受けた者なら誰もが、一度は頭に「?」を浮かべたはずだ。

「なぜ、兄のカット代は500円で、弟は300円なのか?」

たかが200円、されど200円。この価格差は、単なるサービス内容の違いだけで説明できるほど、浅いものではない。我々はこの200円の向こう側に、技術格差、巧妙な価格戦略、そして兄弟間に横たわる、光と影の人間ドラマの匂いを嗅ぎ取ってしまった。

今回は、この「200円問題」に深く切り込み、地下通路に渦巻く兄弟の真実に迫る。

コガネ地下「ポケモン びようしつ」事業概要

まず、このミステリアスなビジネスの概要を整理しよう。

店舗所在地
コガネシティ地下通路。一等地とは到底言えない、いわゆる「ワケあり物件」。
賃料は安いと推測される。

サービス内容
ポケモンの毛づくろい(カット&トリミング)。ポケモンのなつき度を上昇させる効果がある。


スタッフと価格設定

兄

きれいに して あげますよ!

「ポケモンびようしつ」の。料金500円。「うできき」を自称し、その技術には定評がある。


弟

ボクに まかせて みるかい?

「ポケモンびようしつ」の。料金300円。値段の安さが売り。


効果(ゲーム内データ)
兄に頼んだ方が、なつき度の上昇効果が高い。

この基本情報だけでも、「なぜわざわざ地下で?」「なぜ兄弟で価格が違う?」など、ツッコミどころは満載である。

このビジネスモデル、おかしくないか?

この「兄弟サロン」が抱える不可解な点を指摘していこう。

価格差200円の妥当性
確かに兄の方が効果は高い。しかし「なつき度」という効果は、ステータス画面で数値化されるわけではない、極めて曖昧な指標だ。この目に見えない価値に対して、200円、つまり弟の価格の約1.7倍もの価格差を設定する根拠はどこにあるのか。

劣悪すぎる出店戦略
なぜ、ジョウト最大の商業都市にありながら、地上の一等地に店を構えず、薄暗い地下通路で営業しているのか。その技術力に自信があるのなら、百貨店のテナントや路面店で、より高単価なサービスを展開できるはずだ。この立地選定には、何か特別な理由があるとしか考えられない。

非効率な内部競争
同じ場所で、同じサービスを、兄弟が異なる価格で提供する。これは、顧客を奪い合う「カニバリゼーション(共食い)」を引き起こす、極めて非効率な経営モデルである。なぜ、店として価格を統一し、利益の最大化を図らないのか。

200円に隠された兄弟の真実

これらの謎を解く鍵は、やはり「200円の価格差」にある。この差額が生まれた理由を、我々は4つの仮説から分析する。

説① 兄は「地下のゴッドハンド」だった

最もシンプルかつ美しい仮説だ。兄のカット技術――その絶妙なハサミさばき、ポケモンとの対話能力、そして毛並みに艶を与える秘伝のトリートメント技術は、弟のそれを遥かに凌駕する。彼の手にかかれば、どんなに懐いていないポケモンも心を開き、至福の時間を過ごすという。200円は、その神業に対する当然の「技術料」であり「指名料」なのだ。彼は、地下に埋もれた真のカリスマ美容師だったのである。

説② 「松竹梅」理論の巧みな応用

これは、兄弟が裏で手を組む、したたかなビジネス戦略という見方だ。500円と300円という2つの選択肢を提示することで、顧客に「どちらにしようか」と考えさせ、「利用しない」という選択肢を心理的に排除している。 さらに、「アンカリング効果」により、多くの顧客は「安かろう悪かろうかもしれない300円」を避け、「最高品質(であろう)500円」を選ぶ傾向にある。弟の300円という価格は、兄の500円を「お得」かつ「正当な価格」に見せるための、巧妙な「おとり(デコイ)」なのだ。彼らは地下で、恐るべき価格戦略を仕掛けていたのである。

説③ 弟の自己肯定感が低すぎた

ビジネスではなく、兄弟の心の闇に焦点を当てた説だ。「ねだんの やすいのが うり!」という弟のセリフ。これは、謙遜などではない。常に偉大な兄と比較され続けた結果、彼の心に深く刻まれた「劣等感」の叫びなのである。 彼は、自分の技術に自信が持てず、兄と同じ500円という価格を受け取ることに、耐えがたい罪悪感を感じている。300円という価格は、彼が自分自身につけた「値段」なのだ。この200円の差は、兄弟の歪んでしまった関係性の、悲しい象徴なのである。

説④ 兄は家庭を持ち、弟は独身だった

最も人間味あふれる説だ。兄はすでに結婚しており、コガネシティの高い物価の中で、妻や子供を養っている。一家の大黒柱として、彼は500円という価格を設定せざるを得ないのだ。 一方、弟は独身貴族。自分の生活費さえ稼げればよく、それよりも多くのトレーナーとポケモンに喜んでもらうことにやりがいを感じている。だからこその300円。この200円の差は、兄弟がそれぞれ背負っている「人生の重み」の違いだったのかもしれない。

【結論】200円は、魂の価格だった

コガネシティの地下でひっそりと営業する、美容師兄弟。 彼らの間に存在する、たった200円の価格差。それは、単なるサービスの対価ではなかった。

それは、兄の技術へのプライドであり、兄弟が仕掛ける巧妙なマーケティング戦略であり、弟が抱える拭いきれないコンプレックスであり、そして、それぞれが歩む人生の重みが複雑に絡み合った、「魂の価格設定」だったのである。

次に我々が地下通路を訪れ、どちらに頼むか選択を迫られる時、それは単なるコストパフォーマンスの比較ではない。兄の確立された技術と人生を応援するのか、それとも、弟の未熟ながらも懸命な成長に未来を託すのか。トレーナー自身の価値観と生き様が、静かに問われているのだ。

たかが200円、されど200円。お金の重みを噛み締めながら、我々は再び、薄暗い地下通路の階段を降りていくのである。

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