あの兜の下には、乙女にモテて照れる少年がいた(かもしれない)
ドラクエシリーズを遊んだことがある人なら、「ロトの勇者」といえば誇り高く、神々しき伝説の存在……そんなイメージがあるかもしれない。が、ちょっと待ってほしい。
シリーズ第一作『ドラゴンクエスト』の主人公――そう、あの青い甲冑にツノ付き兜の彼は、実は歴代でいちばん「人間臭い」存在だったのではないか?という説を今回は提唱したい。
登場時から丸腰 しかも全裸説
現代RPGの主人公たちは、最初からある程度装備を与えられ、仲間にも支えられつつ冒険に出る。ところが初代ドラクエの主人公は違った。
王様に呼び出されていきなり「竜王倒してきて」宣言を受けた時、彼がまとっていた装備は……ない。本当にない。完全にノー装備、言ってしまえば「素っ裸」。
武器すら持っておらず、ラダトーム城の玉座の前に丸腰で現れた青年。もうこの時点で、設定ガバガバとかじゃなくて「人間臭すぎ」なのだ。
性欲強めの描写多数 初代から「パフパフ」ガチ勢
後のシリーズではもう少し抑えめになるこの方面、初代主人公は割と全開だった。
ローラ姫を助けた後は、彼女が押しかけ女房になるし、宿屋で町娘と“何か”をしている描写まで存在。しかも、町娘じゃなくてパフパフを選ぶと本物(!?)を金で買える。
その行動、完全に「モテたい青年」のそれである。旅の目的が竜王討伐であるはずなのに、寄り道の動機がわりと俗っぽい。いや、いいのだ。人間だもの。
本気で竜王の提案に乗ることも可能
「世界の半分をやろう」と言われて「はい」と答えられる勇者ってどうなの?と今でこそネタにされがちだが、ここが本質。
「はい」と選べる設計がある=プレイヤーの選択に応じて闇落ちも許容しているのだ。
言い換えれば「迷う心」を持っているということ。葛藤する勇者、それってもう人間味のかたまりでは?
現代の主人公なら「そんな誘いに乗るものか!」と即答するのが普通。でも彼は、選べる。いや、我々が選ばせるんだけど、選ばせてもらえる。
洗練されすぎた「勇者」像
ドラクエ5の主人公は家族愛の権化、ドラクエ11の主人公は神の子で生まれつき聖人、ドラクエ3に至っては旅立ち前から母親に「ロトになって帰ってきなさい」扱い。
その点、初代主人公は生まれも育ちも謎。親すら不明、ロトの子孫という自己申告だけで旅に出る。しかも、ちょっとがんばれば竜王の誘惑に乗る(プレイヤー次第)。
でもだからこそ、私たちは彼に感情移入できるのかもしれない。だって彼は――我々と同じように迷い、ちょっとムフフに惹かれ、時に誘惑され、それでも最後には世界を救ったのだから。
【結論】ヒーローである前に、一人の少年だった
ドラゴンクエスト初代の主人公、後の作品に比べて装備も薄く、描写も控えめ、人気投票でも存在感は薄かった。
だけど、そのぶん一番「生身」だった。強くなきゃいけない理由も、自分の国を持ちたい動機も、すべて彼自身の中にあった。
我々が冒険を始めたときのように、不安と希望を胸に、最初の一歩を踏み出したのだ。
彼はやっぱり、最も「人間らしい」勇者だった――そう言って、讃えたい。