ポケモン初代の冒頭、あまりにも有名なシーンがある。
我々プレイヤーは人生で何度もこのセリフを目撃してきたはずだ。

こいつは わしの まご
きみの おさななじみであり ライバル である
…えーと? なまえは なんて いったかな?
…ちょっと待ってほしい。
孫の名前を忘れる祖父がどこにいるだろうか?
いや、世の中には多少物忘れが進んだ高齢者はいる。だが問題はオーキド博士、ポケモン学の権威であり、研究所を構え、図鑑を管理し、あのカントー全土にその名を轟かせているトップ研究者であることだ。
そんな彼が自分の孫の名前を忘れる──これは一体、どういうことなのか?
今回はこの謎を徹底考察していこう。
そもそもプレイヤーに選ばせるための「儀式説」
オーキド博士は実は孫の名前を忘れてなどいない。
あの「えーと?」のくだりは、プレイヤーに名前を自由に決めさせるための、わざとらしいフリだった可能性がある。
つまりこうだ。
「名前は…なんだったかな?」
(さあ、好きに決めなさい)
プレイヤーにカスタマイズさせるための建前として「忘れたことにした」。要は、ゲームシステム都合のメタネタをオーキドが自覚的に演じているのだ。
もしそうだとすると──オーキドはとんでもないメタ視点の持ち主である。
研究に没頭しすぎて孫の名前を失念説
ポケモン学の権威オーキド博士。
彼は四六時中、ポケモンの生態・進化・繁殖・分布・技マシン互換性などの研究に没頭している。
あまりに研究に没入した結果、家族の名前どころか、日常生活の記憶すら抜け落ちてしまった可能性はある。
「図鑑は151匹だが、孫の名前は思い出せない」
皮肉にも、カントー全域のポケモンの分布・特徴は即答できるのに、最愛の孫の名前だけは曖昧。
研究者の典型的な弊害なのかもしれない。
孫の名前が実は毎回変わる「多世界解釈説」
初代のプレイヤーならおわかりだろう。
孫の名前は「プレイヤーの入力次第」でいくらでも変わる。タケシでもサトシでも登録できる。
つまりこれはパラレルワールドが毎回生成されているのではないか?
オーキド博士は「無限の平行世界」の中で常に異なる名前の孫を見ているため、どの世界の名前だったのか混乱してしまった可能性がある。
「この世界では…キミの名前は何だったかな?」
そんな次元の裂け目にいる博士なのだとすれば、むしろ記憶が正常な方が不自然である。
そもそも孫は実はクローンである説
もっと妄想寄りに踏み込もう。
オーキド博士はかつて遺伝子工学の実験に手を出していたのではないか?
その際、失敗作・派生体・クローンが複数生まれ、孫に「似た存在」が何人もいたのでは?
結果、どの個体が現存している孫なのか曖昧になってしまった──
「…今この研究所にいるのは何代目の孫だったかな?」
そう考えれば、名前が出てこないのも納得できる。
あの「えーと?」はプレイヤーに対する挑発説
実はオーキド博士、主人公に圧をかけてきている可能性もある。
なにせ「君の幼なじみであり、ライバルだ」とまで言った後に名前を忘れるのだ。
わざと名前を忘れたフリをして、
「さて、お前は自分のライバルの名前くらい覚えているだろうな?」
と、主人公の記憶力と覚悟を試していたとも解釈できる。
もしこれが事実なら、オーキド博士はかなりの曲者である。
実はすべてを分かっていた博士の狙い?
どの説も一理あるが、どれか一つに決めつけるのはむしろ危険かもしれない。
オーキド博士はすべてを知った上で「名前を忘れたフリ」をし、プレイヤーに余白を与えていたのでは?
・世界を重層的に理解するメタ視点
・研究に没頭する科学者気質
・倫理観ギリギリのクローン技術
・挑発的な指導者としての姿勢
…これらすべてが合わさったとき、
オーキド博士はまさにカントーの神に等しい存在となる。
そして最後に──
孫自身がそれを茶化すかのようにこう言い放つのだ。
「じいさん! またくたびれたぞー!」
…その笑顔の裏に、博士と孫、二人だけが知る禁断の秘密が隠されていたのかもしれない──。