はじめに
ポケモン金銀の世界を旅していると、コガネシティで出会うのがあの謎の自転車屋──ミラクルサイクルである。

じてんしゃ ぜんぜん うれない…
きみ じてんしゃに のりまくって せんでん してくれない?
──どうやらコガネシティに移転してきたばかりらしく、まったく売上が伸びていない様子だ。しかし、この男の本当の恐ろしさはここからだ。我々は、この店主がジョウト随一の経営プロであった可能性を本気で考察してみたい。
広告費ゼロ円の奇策「体験型広告戦略」
普通なら広告代理店に頼んでチラシを撒いたり、テレビCMを流したり、ラジオ番組に提供したりするところだ。しかし、ミラクルサイクルは違った。
現物をタダで配るという暴挙に出たのである。

じてんしゃ かすからさ
──これは表向き「貸す」だが、実質「無期限貸与=ほぼ無料配布」である。
これが意味するのは、広告媒体費が一切かからないということ。現物(自転車)を渡し、実際に消費者(プレイヤー=主人公)に使わせる。すると、主人公はジョウト地方中を爆走する。まさに動く広告塔。
つまり「制作費ゼロ・媒体費ゼロ・流通費ゼロ」という超効率戦略なのだ。
SNSのない世界での圧倒的拡散力
金銀の世界にはSNSもインターネットも存在しない。だが、主人公は物理的に全土を駆け巡るSNSとなる。
目撃した市民は言うだろう。
「最近、やたら軽快に移動してる少年がいるな。あれが噂のミラクルサイクルの自転車か…」
口コミ効果の自己増殖。
この時代においては、これほど効率的なプロモーションは存在しない。現実世界で言うところの「体験型バイラルマーケティング」の先駆者だったのである。
製品性能の高さでリスクをゼロに
ここで見逃せないのが、ミラクルサイクルが「性能抜群」であることだ。
普通なら無料配布は品質を落としがちだが、逆に最高品質を配ることで「乗ったら最後、もう欲しくてたまらない」状況を作り出している。これぞ「サンプルマーケティングの完成形」である。
実は経営危機ではなかった説
よく考えてほしい。「売れない」というセリフは虚偽申告だった可能性もある。
ここで目をつけたのが「旅人」という存在だ。
これを広告塔に仕立て上げるなど、相当な戦略家でなければ思いつかない。むしろあの「売れない」というセリフは「広告モデルとして協力してくれ」という導入トークだったのかもしれないのだ。
プロの証拠① 営業圏の拡大
ミラクルサイクルは、たった1台を貸しただけで営業圏が以下に広がる。
本来なら配送網や代理店を組織して営業拡大するところを、主人公ひとりに丸投げして完全全国展開を達成しているのである。
プロの証拠② サンプル提供は究極の信用創造
普通の商品は
- 宣伝 → 買わせる → 使わせる → 満足させる
という流れだが、ミラクルサイクルは逆だ。
- 使わせる → 満足させる → 欲しくさせる → 周囲が欲しくなる
先に価値を実感させ、「商品の価値」ではなく「体験の価値」で語らせるのが真骨頂。
現代マーケティングで言えば完全に「プロダクトレッドマーケティング」「顧客経験価値(CX)」の領域である。
プロの証拠③ 他社がまったく真似できていない
金銀世界において他に無料配布戦略を採用している企業は見当たらない。
完全にブルーオーシャン戦略を実現しているのだ。ミラクルサイクルだけがジョウト地方で”圧倒的な差別化”を達成している。
【まとめ】ミラクルサイクルはジョウト屈指の経営プロだった
結論はこれである。
──まさにミラクルサイクル=ジョウト屈指の経営プロだったのだ!