ゲーム考察ポケットモンスター

【ポケモン金銀】ジョウト御三家選びは“人生の選択”だった~チコリータという茨の道、ヒノアラシとワニノコの王道~

ゲーム考察

はじめに

全ての物語は、一つの選択から始まる。 そして、ポケモン金銀における最初の、そして最も重要な選択。それは、ワカバタウンのウツギポケモン研究所、あの機械に収められた3つのモンスターボールの前で、我々が下した決断である。

  • 穏やかな表情の、くさタイプ「チコリータ」。
  • 背中から炎を出す、臆病なほのおタイプ「ヒノアラシ」。
  • 陽気に踊る、みずタイプ「ワニノコ」。

多くのトレーナーは、これを単なるタイプの好みや、見た目の愛らしさで選んだことだろう。 しかし、今にして思えば、あの選択は、我々がこれから歩むジョウト地方での冒険の「難易度」、いや、それ以上に、我々が体験する「物語の質」そのものを決定づける、あまりにも重大な“人生の選択”だったのである。

今回は、ジョウト御三家という名の、3つの異なるシナリオを徹底的に解剖する。

チコリータ

まず、我々はこの可愛らしい若葉のポケモンが示す、過酷な現実と向き合わなければならない。 結論から言えば、チコリータを選ぶことは、自ら「ハードモード」を選択するに等しい。

序盤に立ちはだかる、絶望的な相性の壁

ジョウト地方は、くさタイプのポケモンに、あまりにも優しくない。

  • 1人目のジムリーダー・ハヤトは ひこうタイプ。効果はばつぐんだ。
  • 2人目のジムリーダー・ツクシは むしタイプ。効果はばつぐんだ。
  • 道中で嫌というほど出現するポッポ、オニスズメ、イトマル、レディバ…。
  • 暗躍するロケット団が多用するのは、ズバットやドガースといった、どくタイプ。

まさに、序盤は茨の道。チコリータ(あるいはベイリーフ)は、ただ耐え忍ぶことを強いられる。最終進化系のメガニウムも、タイプはくさ単体のままで、ステータスは耐久寄り。派手なアタッカーにはなれない。

では、なぜこの道を選ぶ者がいるのか。 それは、この道こそが、最もトレーナーを成長させるからだ。 チコリータを選んだトレーナーは、相棒一体に頼るゴリ押しプレイを許されない。序盤から、キキョウシティ周辺でイシツブテを捕まえ、あるいはコガネシティへの道でメリープを探し、弱点を補う「チーム」を構築する必要に迫られる。

チコリータを選ぶとは、「私は安易な道を選ばない。戦略と、仲間との絆で、この逆境を乗り越えてみせる」という、熟練トレーナーとしての決意表明なのだ。苦難を共に乗り越えたメガニウムとの絆は、他のどのポケモンよりも、深く、そして強固なものになるだろう。

ヒノアラシ

次に、背中の炎が印象的な、ヒノアラシ。 彼と共に歩む道は、チコリータとは対照的な、王道にして正統派の「英雄の物語」である。

安定した攻略ルートを約束する、有利な相性

ヒノアラシのほのおタイプは、ジョウトのジムリーダーに対して、非常に安定した戦いを約束してくれる。

  • ツクシのむしタイプには、圧倒的に有利。
  • マツバのゴーストタイプには、ノーマル技で対抗可能。
  • ヤナギのこおりタイプ、ミカンのはがねタイプには、言わずもがな。

明確な苦手タイプはいるものの、序盤で苦労することはほとんどない。最終進化系のバクフーンは、高い「すばやさ」と「とくこう」を誇る、高速特殊アタッカー。その姿は、まさに旅のエースと呼ぶにふさわしい。

ヒノアラシを選ぶとは、「力と速さで、悪を打ち砕く」という、最も分かりやすく、最もカタルシスに満ちた物語を選択することだ。臆病だったヒノアラシが、頼れるバクフーンへと成長していく姿は、主人公の成長と完璧に重なり合う。これは、多くの人が思い描く、王道の冒険活劇なのである。

ワニノコ

最後に、陽気で大きな口を持つ、ワニノコ。 彼が示す道は、戦略や物語性とは少し違う。それは、ただひたすらに「楽しさ」と「痛快さ」を追求する道だ。

序盤から完成された、圧倒的な物理性能

ワニノコは、早い段階で「かみつく」といった、優秀な物理技を習得する。進化系のオーダイルは、「こうげき」の種族値が非常に高く、その巨大な顎で、目の前の敵を次々となぎ倒していく。 弱点が少なく、物理アタッカーとして一貫して高い性能を誇るため、ストーリー攻略で困る場面はほとんどない。

ワニノコを選ぶとは、「細かいことはいい。目の前の壁を、力で噛み砕いて進む」という、最もシンプルで、最も爽快な冒険を選択することだ。難しい戦略は必要ない。陽気な相棒と共に、笑い、踊り、そして全てを破壊する。これぞ、冒険の原初的な楽しさに満ちた、最高の旅路と言えるだろう。

【結論】最初の選択こそが、君の“物語”だった

チコリータ、ヒノアラシ、ワニノコ。 ジョウト御三家選びの天才的な点は、その絶妙な「アンバランスさ」にある。どのポケモンを選ぶかによって、プレイヤーが体験するゲームの難易度、そして物語のテイストそのものが、劇的に変化するよう設計されていたのだ。

  • チコリータ: チームワークと戦略で逆境を乗り越える、知将の物語
  • ヒノアラシ: 相棒と共に正道を突き進む、王道の英雄譚
  • ワニノコ: 全てを力でなぎ倒す、痛快無比な破壊者の旅

あなたがウツギ博士の研究所であの日、手にしたモンスターボール。 その中に入っていたのは、単なる一匹のポケモンではない。 あなたがこれから体験する、かけがえのない“物語”そのものだったのである。

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